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つばめ先生のなるほど税金学 第12回
「遺贈」---「相続」との違いと注意点

更新日:2018年1月19日

最近、身寄りや相続先のないお年寄りの間などで、自分の死後、財産の一部をNPOなどに贈る「遺贈」という形の寄付が注目を集めています。今回は、つばめ先生ことつばめ税理士法人の渡邉久嗣先生に「遺贈」について詳しく教えていただきます。

1.遺贈とは


遺贈とは、亡くなった人(被相続人)が遺言により、個人・法人を問わず被相続人の財産を無償で譲ることをいいます。

相続・・・法定相続人のみが承継出来る。遺言は不要(※)
遺贈・・・法定相続人以外にも贈与が出来る、遺言は必須
※遺言がない場合には、相続人間で財産をどのようにわけるか話し合いをすることになります。

こんな場合に遺贈をします。

    (1)相続人がいない場合
  • 法定相続人が存在しない場合(例えば、両親が既に亡くなり、ひとりっ子で、生涯独身であるといった場合です)、遺言が無いまま死亡すると全財産が国のものになります(叔父叔母や従兄弟などは法定相続人になりません)。このようなケースで財産を親類に譲りたい場合には、遺言を作成する必要があります。

    (2)法律上の婚姻関係でない者に財産を譲りたい場合
  • 事実婚や内縁関係といった法律上の婚姻関係にないパートナーには相続権がありませんので、財産を相手に譲りたい場合には、遺言を作成する必要があります。

    (3)寄付をしたい場合
  • 当然のことながら法人には相続権がありませんので、財産を譲りたい場合には、遺言を作成する必要があります。
  • 法人は、株式会社だけでなく、学校法人や公益財団法人、NPO法人、国、地方公共団体なども含まれます。したがって、出身学校への寄付、故郷の市町村への寄付、公益性の高い法人などへの寄付を遺贈で行うことも可能です。

2.遺贈の種類


遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があります。

    (1)包括遺贈
  • 包括遺贈は「財産の1/2を公益社団法人X研究所に遺贈する」というように、割合を指定する方法です。
  • なお、包括遺贈の場合は、債務も含めて一切の権利義務を承継します。

    (2)特定遺贈
  • 特定遺贈とは「現金〇〇円をNPO法人Y会に遺贈する」というように、遺贈する財産を特定する遺贈の方法です。

3.相続人には「相続させる」と書く


遺言を書く場合、相続人に対しては「土地を妻に相続させる」あるいは「土地を妻に遺贈する」のどちらで書いても有効ですが「相続させる」と書くことをお勧めします。
「相続させる」であれば、指定された者(この場合は妻)の印鑑証明で登記の申請が出来ますが、「遺贈する」ですと他の相続人全員の印鑑証明が必要です。遺言に不満を持つ他の相続人が協力しないことも想定されますので、この点は注意が必要です。
なお、以前は「遺贈する」と書くと登録免許税が高かった(税率20/1,000)のですが、現在は、法定相続人であればどちらの記載でも同額(税率4/1,000)になっています。

4.受遺者が先に亡くなった場合は無効になる


民法では「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者(もらう人)が死亡したときは、その効力を生じない」と規定しています。したがって、Aさんが「知人Bさんに自動車Cを遺贈する」と遺言を書いたものの、Bさんが先に亡くなった場合には、この遺贈は無効になります。Bさんが死亡した場合はBさんの配偶者に遺贈したいのであれば、新たに遺言を書くことになります。

5.遺贈を行うときの注意点

    (1)遺留分を考慮した遺贈をする
  • 「全財産をZ財団に遺贈する」ということも可能ではありますが、それでは、残された相続人の生活に支障が出ます。民法は、兄弟姉妹以外の相続人が相続財産の一定割合を取得することを保証しています(これを「遺留分」といいます)。この例では、相続人がZ財団に対して「私の遺留分相当を渡してほしい」と請求することが可能です(これを「遺留分減殺請求」といいます)。のちのトラブルを避けるためには、各相続人の遺留分を考慮した遺贈を行うのが望ましいでしょう。

    (2)包括遺贈の場合は債務も承継する
  • 包括遺贈の場合、指定割合に基づいて一切の権利義務を承継しますので、債務も承継することになります。もし、資産よりも債務のほうが多ければ、受遺者に迷惑をかけることにもなりかねません。包括遺贈を行う場合には、遺贈者も受遺者も財産債務の精査を行う慎重さが求められます。なお、包括受遺者は、包括遺贈があったことを知ったときから3か月以内であれば遺贈を放棄することが可能です(特定遺贈の場合は、期間の制限なく放棄が可能です)。

    (3)相手が受け入れ可能な財産を遺贈する
  • 遺贈の場合は、本来は、相手に事前に伝える必要はありません。しかし、公益法人、NPO法人などに遺贈をしたいという場合、先方の団体の方針や規則などから受け入れできない財産があるかもしれません。せっかくの善意が無駄にならないためにも相手の団体に事前に確認することをお勧めします。

    (4)遺言は専門家に相談をする
  • 確実に遺贈が出来るよう、専門家に相談のうえ遺言を作成することをお勧めします。不動産をめぐるトラブルを避ける目的で遺言を作成する場合には司法書士、将来の相続税等の節税も考慮する場合には税理士への相談も必要でしょう。

6.遺贈があった場合の課税関係

    (1)個人に対して遺贈をした場合
  • ①遺贈者(あげる人)の税金   負担はありません。
  • ②受遺者(もらう人)の税金
  • 受遺者である個人は他の相続人と同様に相続税が課税されます。
  • 受遺者が被相続人の配偶者、父母、子以外の場合は原則として相続税額が通常の2割増しとなります。
  • https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4157.htm
  
    (2)法人に対して遺贈を行った場合
  • ここでは、国、地方公共団体、公益性の高い法人に遺贈をする場合を想定しています。株式会社などに寄付をする場合は、財産を受け入れた会社に課税されるほか、会社の株主にも課税されることがありますので、ご注意ください。
  • ①遺贈者の税金
  • イ)法人に対して不動産、株式、書画、骨董品などを遺贈した場合
  • 法人に対して不動産や株式など、譲渡所得の対象である資産を遺贈した場合、原則として遺贈者に対して譲渡所得(所得税・住民税)が課税されます。ただし、国、地方公共団体、公益性の高い法人への遺贈(寄付)は課税されません。
  • https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3108.htm
  • ロ)法人に対して現金などを遺贈した場合
  • 遺贈した財産が現金や棚卸資産など、譲渡所得に該当しない資産である場合には、所得税・住民税の課税はありません。
  • ②受遺者の税金
  • 受遺者である法人には、相続税は課税されません。
  



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2014年2月27日
harakana さん

医療費控除のこと、まさに「なるほど!」と勉強になりました。

難しい税金についてわかりやすい説明ありがとうございます。

つばめ先生、今後の連載も楽しみにしています〜!

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