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なるほどマネー学

つばめ先生のなるほど税金学 第11回
アパート経営で相続税対策!?

更新日:2017年9月21日

「アパートを建てると相続税対策になる」という話を聞いたことがありませんか。
今回は、つばめ先生ことつばめ税理士法人の渡邉久嗣先生にアパート対策が相続税対策になる理由を説明すると共に、アパートの経営計画書を検討する際の注意点を教えていただこうと思います。

土地・建物の評価額を下げる


(1)土地の評価額
相続税の宅地評価には「路線価方式」と「倍率方式」の2つの評価方法があります。
「路線価方式」は、路線価(路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額)を基に宅地の評価額を求めます。
「倍率方式」は、路線価が付されていない地域における評価方式で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じ宅地の評価額を求めます。
(路線価や倍率は、国税庁のホームページで調べることができ、毎年7月1日に最新の数字が公表されます)

(2)建物の評価額
建物は、固定資産税評価額=相続税評価額となります。この固定資産税評価額は、実際の建築価格ではなく、建物の所在する市長村が、一定の評価基準をもとに評価額を決定します。マイホームを新築した後、市町村へ建物の契約書などを提出したり、そののち職員の訪問を受けた経験をお持ちの方もいると思いますが、これは、契約書の記載内容を確認したり、実地調査をして固定資産税評価額を決めるために行っているのです。

こうして求められた固定資産税評価額は、実際の建築価格の50~60%程度になることが多いです。

(3)アパートを建てると評価額はどのくらい下がるか 
土地・建物を他者に貸している場合には、(当たり前ですが)所有者は土地・建物を自由に使うことはできません。立退を求めても使用者は簡単に応じてくれないでしょう。
そこで、相続税では、賃貸されている土地・建物については評価額に一定の調整(減額)をしています。

では、アパートを建てることで、どのくらい相続税評価額が下がるのでしょうか。

    前提条件
  • ・空き地で相続税評価額が1億円、面積400㎡の土地がある
  • ・この地区の 借地権割合は60%、借家権割合は30%である
  • ・1億円でアパートを建てると固定資産税評価額は6,000万円になる
  • ・他に土地は所有していない
    建築前
  • 現金・・・・・・・・・・・・ 1億円
  • 土地(自用地)・・・・・・・  1億円
  • 相続税評価額は合計で2億円です
    建築直後
  • 建物(自用建物)・・・・・・・・ 6,000万円
  • 土地(自用地)・・・・・・・・・・・・1億円
  • 相続税評価額は合計で1億6,000万円に下がりました。
  • まだ賃貸開始前なので、貸していることによる減額はありません。
    賃貸開始後
  • それぞれ、以下の算式で評価額を求めます。
  • 建物(貸家)・・・・・・自用建物の評価額×(100%-借家権割合)
  • 土地(貸家建付地)・・・・自用地の評価額×(100%-借地権割合×借家権割合)
  • したがって
  • 建物(貸家)・・・・・・・ 6,000万円×(100%-30%)=4,200万円
  • 土地(貸家建付地)・・・・1億円×(100%-60%×30%)=8,200万円
  • 相続税評価額は合計で1億2,400万円です。


アパートを建築することで、評価額が建築前と比較して7,600万円も下がりました。
相続税率が50%なら3,800万円の節税、税率10%でも760万円の節税が可能になります。


なお、土地や建物の評価が下がるのは、賃貸部分に限ります。空室部分は所有者が自由に使用できると考え、自用建物・自用地と同額の評価になります。
仮に、相続開始時に再び全室空室になってしまったなら、評価額は建物(自用建物)6,000万円+土地(自用地)=1億6,000万円になります。

相続税対策の観点からも、空室が出ないように努力しないといけません。
空室リスクの対策として、一括借上契約の利用が考えられます。この場合、家賃収入と空室リスクのどちらを優先するかの選択となるでしょう。なかなか両立とはいかないようです。

小規模宅地の減額の特定を利用


(4)小規模宅地の減額が使えることもある
この連載の第4回 で「小規模宅地の減額の特例」の一部を紹介しました。このときは、「特定居住用宅地等」(最大330㎡までの部分の土地評価額が80%減額される)を中心に説明しました。

アパートの敷地は「貸付事業用宅地等」に該当し、以下の①~③の要件を満たすと最大で200㎡までの部分の評価額が50%減額されます。

  • ① 土地の取得者は相続又は遺贈により財産を取得した被相続人の親族であること
  • ② ①の者が相続税の申告期限まで引き続きその土地を所有していること
  • ③ ①の者が相続税の申告期限まで引き続きその土地を貸付事業に供していること


賃貸開始後のケースの場合、土地の面積400㎡のうち200㎡の部分までが、50%減額の対象となります。したがって評価額は以下まで下がります。

  • ※ 小規模宅地の減額の規定が適用可能な土地が複数ある場合、最も有利になるよう適用する土地を選択できます。なお、一度申告書を提出したあとに選択変えすることは原則できません。

  • 建物(貸家)・・・・・・・ 6,000万円×(100%-30%)=4,200万円
  • 土地(貸家建付地かつ小規模宅地の減額の適用後)
  • 8,200万円-(8,200万円×200㎡/400㎡×50%=2,100万円)=6,100万円
  • 合計で 1億300万円
  •  
  • ※ 小規模宅地の減額は土地の評価額を下げる規定です。建物の評価額は変わりません。


(5)固定資産税も安くなる
さらに、毎年課税される固定資産税も安くなります。アパート敷地1戸当たりの土地の面積が200㎡であれば、固定資産税評価額は更地にくらべ6分の1になります。もし、8戸のアパートを建てるのであれば、200㎡×8戸=1,600㎡まで適用対象になります。

(6)法人所有にすればさらに節税も?
アパートを建てた場合、家賃は建物の所有者のものになります。家賃収入の分だけ現金が増える=相続財産が増えることになるので、相続税対策の効果が薄れることも想定されます。
そこで、土地所有者個人の財産を増やさないために、建物を法人所有にするスキームを検討します。

  • ・会社を設立し、建物をその法人の所有にします。
  • ・土地所有者個人と会社の間で土地の賃貸借契約を結びます。
  • ・複数の親族(本人、配偶者、子、孫など)を役員にして、役員報酬を支払います。
    こうすることで、土地所有者個人が建物を所有する場合に比べ、所得の分散が可能です。相続人予定者に給与を払うことで、納税資金の準備が期待できます。


以下の場合には、法人所有スキームを検討してもよいでしょう。

  • ・複数のアパートの所有を検討している又は、1棟の規模が大きい
  • ・土地所有者は60代以下と年が若い(相続発生まで期間が長い)


地代や役員報酬の設定については、資産税(相続税、贈与税、不動産分野に関する税を総称して資産税といいます)に詳しい税理士に相談することをお勧めします。特に、地代の設定については、一般的な相場と節税対策上認められる相場が異なることが多く、また、その後の地代改定も含めて慎重な検討が必要です。

また、法人は社会保険に強制加入です。近年、未加入の法人に対する指導が厳しくなっていますので、この点も含めた経営計画の検討が必要です。

アパート経営で気をつけるべきこと


(7)アパート経営の計画書を見るポイントはここ!
営業マンが持ってくる経営計画書をよく検討しましょう。利益が出るようにお化粧された計画書になっているかもしれません。例えば、こんなところを見てください。

  • ・賃料は何年も同じになっていませんか。古い物件は、築浅物件より賃料を下げないと入居者が来ない。また、一括借上の場合、空室実績を基に2、3年毎に賃料を見直す契約が多いので注意。
  • ・修繕費用は計画に入っていますか(10年たてば、建物もその分痛みます)
  • ・リニューアル費用は入っていますか(今は、Wi-Fi、CATV、録画機能付きインターホンは当たり前。10年後はさらに進化しているでしょう。)
  • ・減価償却費は計画に入っていますか。
  • ・借入を予定している場合、利率は想定利率に比べ適正ですか。

    当初の計画書を基に
  • ・予定地での需要予測(供給過多に注意)を行う。
  • ・近隣の相場の把握をして、適正家賃を検討する。
  • ・どのぐらいの空室までなら、キャッシュがまわるのかを検討する。
  • ・修繕費やリニューアルにかかる支出も計画に含める。
  • ・借入れを予定している場合、信用保証協会の保証料、抵当権設定費用なども考慮する。
  • ・管理費、税理士費用、(法人の場合)社会保険料会社負担分、納税額なども考慮する。
  • ・減価償却費は適正に計上されているか。また、中古物件の場合は、あらかじめ、契約書に土地と建物の価額を個別に記載することが望ましい。


以上のことを踏まえて、ご自分で(あるいは客観的な第三者に依頼して)適正な経営計画書を作成・検討してみてください。



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2014年2月27日
harakana さん

医療費控除のこと、まさに「なるほど!」と勉強になりました。

難しい税金についてわかりやすい説明ありがとうございます。

つばめ先生、今後の連載も楽しみにしています〜!

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