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いまを生きぬくメンタルケア
第23回 SADの治療 精神療法 4

更新日:2017年3月17日

山田和夫
東洋英和女学院大学 人間科学部教授
横浜尾上町クリニック 院長

山田 和夫 先生

SAD(社交不安症)の治療の基本は薬物療法と精神療法です。SADの精神療法についてご紹介していますが、今回は、「森田療法」について、山田先生に教えていただきます。森田療法は、精神科医である森田正馬(もりた・まさたけ)が、大正時代に創始した精神療法です。

あるがままの自分を認める


日本生まれの精神療法である「森田療法」は、これまで紹介した認知行動療法などとは少し異なります。森田療法は、人の力で不安をコントロールすることを目的とせず、不安に対して自らの態度を転換させるところに主眼が置かれています。

たいていの方は、不安や恐怖があると「克服したい」「消し去りたい」とお考えになるでしょう。とくにSADの患者さんではそのような傾向があります。

しかし、森田療法は、「不安」や「恐怖」を単なるマイナスの感情とは考えず、これらの感情の裏には、「生の欲望」があると理解します。
人前で話すときに極度の緊張から声がでない、頭の中が真っ白になってしまうというSADの患者さんの心の奥には、「自分の考えをみんなに伝えたい」「他人に認められたい」などの欲望が存在しているのです。このような欲望が強くあるからこそ、失敗を恐れ不安が生じてしまうのです。

欲望という言葉にあまりよい印象をもたない人がいらっしゃるかもしれませんが、不安と欲望は表裏一体で、どちらも自然な感情です。それなのに、欲望へは目を向けず、不安だけ排除しようとあれこれ努力すると、ますます強い不安にさいなまれることになるのです。そのような悪循環を森田療法では「とらわれ」と呼びます。

森田療法では、不安を感じているあるがままの自分を認めてあげるところから始めます。そして、「欲望」を建設的に発展させることを目指すのです。欲望とは「生きよう」という意思に他ならないのです。



森田療法 入院治療の実際


では、森田療法とはどのような治療法なのかを、入院治療の流れにそってご説明します。
●●絶対臥褥期(ぜったいがじょくき)――7日間●●

この期間は、食事、洗面、トイレ以外の行動はせず、会話も医師との診断時以外はしません。終日、個室でひたすら横になり眠りたいときに寝てもらいます。その間、頭の中に浮かんでくるさまざまな考えにとらわれないようにし、あるがままに受け止めてもらいます。絶対臥褥期の後半から心身の活動意欲がわいてくるようになります。
●●軽作業期――4~7日間●●

部屋の掃除、木彫りなどの軽作業を徐々に開始します。臥褥期を経て高まってきた活動意欲を一気に発散させないようにしながら、気分に流されず必要な行動に向かって活動することを目標にします。
この時期に、主治医との面接や日記指導が始まります。
日記には、その日の行動や感じたこと、考えたことを記録し、自分を振り返るようにします。主治医は日記に書かれたことを考察し、コメントを記し、気づきを促します。
●●重い作業期――1~2ヵ月程度●●

園芸や動物の世話など責任の伴う作業をします。また、料理なども行います。この時期に行う作業は、生活に根ざし、ほかの患者さんと共同で行う内容になります
これらの作業と共同生活から、症状にとらわれずに臨機応変に行動することを目指します。
●●実際の生活期――1週間~1ヵ月程度●●

外泊などを通して退院後の生活の準備をします。社会復帰の準備期といえます。必要に応じて入院先から通勤、通学をする場合もあります。

医師は、このような治療を通して、神経症的なあり方に変化をもたらすように指導します。
指導のポイントになるのは、次の5つです。

治療を始めた頃は、昨日よりも今日、今日よりも明日は、症状が軽くなっていることを望みます。しかし、そのように日々の変化に注意が向いている間は、目に見えた改善は得られにくいのです。
患者さんは、症状の改善が実感できないと「本当によくなるのか」と疑問が生じてきますが、不安を抱えたままでも治療を続けていってほしいのです。途中で投げ出さないでください。続けていくうちに症状を意識することなく、目の前の作業に没頭している自分に気づくことがあるはずです。
その気づきは、一瞬のことかもしれませんが、症状を忘れられた時間があったことは事実です。また、症状があっても作業をやり遂げることができたという事実を重ねることで、実際の物事に意識が向かうようになります。


外来で受ける森田療法


病院やクリニックに通院して森田療法を受けることも可能です。ただし、この場合、仕事や学業をなんとか継続できる程度の、比較的軽症な方が対象となります。

外来での森田療法は、先ほど紹介した入院治療とはアプローチが異なりますが、不安を抱いているありのままの自分を認めるところから始める点は同じです。治療のスタート時は、症状の裏にある「生の欲望」を探し当て、治療の方向性を示します。

次に「生の欲望」を具体的にイメージしてもらい、不安や症状を抱えつつも「生の欲望」に従って、行動してもらうようにします。行動の課題は日常生活の立て直しを図ることが基本となります。何らかの症状によって、避けてきた行動があれば、それを実行することを目標にしてもらいます。
さらに、医師は「行動の転換を素早くする」「臨機応変な対応」などを助言していきます。患者さんは不安や症状は放っておいても時間とともに変化することを経験します。この経験を積み重ねることで、不安や症状にとらわれなくなっていくのです。

行動が広がるにつれ、患者さんの陥りがちな思考パターンというものがみえてきます。完全主義や多罰的な傾向がある場合、コミュニケーションが良好に築けないおそれがあります。そのような性格の傾向にも気づき、最終的には、「ありのままの自分」を認めたように、「他者のありのまま」も認めていけることを目指します。



山田和夫先生プロフィール

医学博士・精神科専門医・精神保健指定医
昭和56年横浜市立大学医学部医学科卒業。昭和62年同大学医学部神経科医局長、平成元年研水会平塚病院副院長、平成10年横浜市立大学医学部附属病院浦舟病院神経科部長、平成12年同大学医学部附属市民総合医療センター精神医療センター部長(助教授)を歴任ののち、平成15年和楽会横浜クリニック院長に就任。平成25年5月に横浜尾上町クリニックを開院。
また、平成14年より東洋英和女学院大学人間科学部の教授を務めている。
日本不安障害学会理事、日本うつ病学会監事、日本総合病院精神医学会評議員等を歴任。
主な著書に『現代精神医学事典』(共著)、『誰もがかかる心の風邪「うつ」の最新治療情報』、『精神科医からのメッセージ 不安・うつは必ず治る』など多数

【参考書籍】
『図解 やさしくわかる 社会不安障害』山田和夫著(ナツメ社/定価1,400円+税)


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2017年3月26日
りょう さん

 森田正馬は、自己の体験をもとに、神経症を精神の病でなく自己理解の誤りから生じていると喝破した。たとえば書痙は、文字を書こうとすると手が震えたり強直して書けなくなることで、神経症の一つとされているが、結婚式等の列席者名簿に改めて名前を書こうとするとき、緊張してうまく書けない経験は多かれ少なかれ誰しもあるだろう。普通はその違和感を忘れてしまうのだが、完璧を目指す神経質者はそれに拘り、あってはならないこと、なくそうなくそうとして返ってその違和感が固着する。もともと病ではないのだから、軽症の場合は、森田療法関連の本を読むだけで解決するケースも多く、私もその一人です。

2013年2月1日
まめるりは さん

こんにちは。いつも勉強させていただいています。

今回のさかい先生の「ヒートショック」は怖いなあと思いました。

実家のお風呂場がまさに危険な「窓あり」「タイルの床」で茶の間に比べて異常に低温ゾーンです。

リフォームするのは大げさですが、気温差がなくなるようにシャワーでお湯をためたりとするよう伝えたいと思います。

 

まめるりはさん

ご投稿ありがとうございます。

ヒートショック、怖いですよね。家の中の危険ゾーンを極力減らして、安全にお過ごしくださいませ。

(Health Scramble運営事務局)

2013年1月22日
小春 さん

うつ病について、知っているようで知らないことがいっぱいありました。

最近、意外と身近にうつ病で悩んでいた人がいることにびっくりしています。

みんな、少し良くなってから「実は」と教えてくれます。

もっと、つらいときに気づいてあげられたらと思います。

このコラムを読んで、うつ病について、勉強していきたいです。

2012年6月26日
ふく ちゃん

Drさかいの健康指南、これから楽しみです。

かかりつけのドクターの必要性は実感しています。

うちの親は気になる病気の症状は、家の近くのクリニックに行き、

紹介状をもらい、市民病院で検査しています。

これで、大きな病気が初期の段階で発見されました!

 

いきなり大きな病院に行くのは億劫らしく、かかりつけのドクターがいなかったら

病気も進行した段階で発見されたのではないかと思います。

2012年6月8日
summer さん

この間、中学1年生の娘とくすりミュージアムに行ってきました。

うちの娘はまだ学校の授業では、薬について習ってないそうですが、ミュージアムでゲームをしたりと楽しんでいました。

 

帰りは日本橋で食事をしたりと、充実の一日を過ごせました。

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