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更新日:2015年10月20日
東京・人形町の魅力をお伝えする「人形町 お江戸小粋な人情ガイド」の2回目は双子のパン屋さんとしても有名な「サンドウィッチパーラーまつむら」へお邪魔しました。こちらは今年で創業94年という老舗のパン屋です。ここで、60年以上看板娘をつとめていらっしゃる3代目夫人の松村牧子さんにお話をうかがいました。取材当日、お店に足を踏み入れると、双子のご兄弟が笑顔でお出迎えくださって、ほっと心がくつろぎました。
日本のパン屋の黎明期
サンドウィッチパーラーまつむらが創業したのは大正10(1921)年。まだパンという食べ物が一般的ではなかった時代です。日本のパン食の歴史をひもとけば、西洋の文化や社会システムをどんどん吸収していった明治時代、横浜・神戸・築地といった外国人居留区を中心にパン食が広まっていきました。
大正7年に、各地で米騒動が起こり、その狂らんのダメージから寺内内閣が倒れました。その後、首相となったのが原敬。爵位をもたない平民宰相の誕生です。原敬は、米が手に入らない場合にはパンを食べるようにと、パンをもって代用食運動を行いました。
そんな時代に応えるかのようなタイミングで創業されたまつむらのスタートは、順調だったそうです。当時、パン屋はまだまだ少なかったのですが、牧子さんは創業者に「先見の明」があったのだとおっしゃいます。
その後、戦争中はパンをつくる材料が手に入りにくかったなど、いくつかの困難を経て、現在にいたっています。この間のお話をおうかがいしたら、日本のパン屋の歴史となりそうですが、今回は割愛させていただき、まつむらさんのおいしいパンの秘密について、教えていただきましょう。
おいしい秘密 その1 流行に流されない
お店には、非常にたくさんの種類のパンが並んでいる
サンドウィッチパーラーまつむらの朝は早いです。午前7時の開店前から、焼き立てのパンを待つ常連のお客様がズラリと並ぶそうです。1日に焼くパンはあまりに多くて正確な個数は把握できないそうですが、1,000個以上とのこと。そんなまつむらさんが、これまでも、そしてこれからも守りたいと思っていることは、昔からある材料をきちっと使って、流行に流されないこと。基本がブレないというところが、長く地元の方々に愛されている所以ではないでしょうか。
「パンの材料は、創業者が考えた配合とかをある程度守っています。だんだんバターのきいたパンとかも増えてきているけど、うちは下町だし、うちの味を守るということを大切にして、いたずらによそを真似しないという信念はありますね。最近のパンって食べたとたんにパアーって匂うでしょ。いい匂いだけど、そういうのって飽きちゃうのよね」(牧子さん)
クリームパン
卵パンやピーナッツパンなども、創業当時からのレシピを基本的に引き継いでいるそうです。クリームパンのクリームは、卵と牛乳を使って、イチから作っています。自家製のクリームに添加物は入っていません。安心して食べていただくためには、添加物をあまり使わないとおっしゃる牧子さん。クリームパンは、こちらの大人気商品で、午後になると売り切れちゃうそうです。
食べると懐かしさが感じられ、さらに安心して食べられるパンが並ぶまつむら――おいしさの秘密を1つ発見しました。
おいしさの秘密 その2 ちょっとしたこだわりと工夫
アンパン、ジャムパン、ブドウパンなどは創業当時からのラインナップです。ジャムパンといえば、イチゴジャムを使っているところが多いのですが、こちらはアンズジャムを使っているので、口に入れるとさわやかな酸味が広がります。イチゴではなくアンズジャムを使うという点が、まつむらならではのこだわりです。
また、ほかのパン屋ではあまり見かけないものに「ちくわパン」があります。これはパンの材料を仕入れているところから、「ちくわを使って何か作ってください」といわれたのが商品誕生のきっかけだそう。
ちくわパン
「新商品が生まれるときって、むこうからくることも多いの。それで、ちくわは海のものだから下にツナを敷いてみてはどうかな? とかいろいろと工夫するわけ」(牧子さん)
サンドウィッチに挟むキュウリも自家製ドレッシングをかけてちょっと寝かせているといいます。このひと手間で、キュウリそのものに味がつくため、キュウリしか挟んでいないシンプルなサンドウィッチですが、ひと味違うものになっています。皆さんに愛される商品をつくるには、こだわりとちょっとした工夫が大事と牧子さんはおっしゃいます。これが2つめのおいしさの秘密ですね。
おいしさの秘密 その3 アットホームなお店の雰囲気
創業当時のレジスター
まつむらさんは、商品のラインナップがとても豊富です。コロッケロールに焼きそばロール、粗挽きメンチ、チキンカツバーガーなどが、棚にずらりと並んでいて、目移りしてしまいます。これら調理パンに関しては、パン職人ではなく、松村家の女性たちがアイデアをだし、商品を開発してきました。
左から守夫さん、牧子さん、民夫さん
「うちの主人は双子で、もう1人兄弟がいるので、男が3人。そこに妻たちが加わって、6人体制でやっていたの。昔は、女3人が頑張って、よそでおいしいものを食べたときには、『あ、これなにかに使えるかな』って参考にしたり、いろいろとアイデアを出しあって、試食品をつくったりしていたの。でも、みんな卒業しちゃって、いま残っているのは私だけ」(牧子さん)
現在、サンドウィッチパーラーまつむらの代表をつとめていらっしゃるのは牧子さんのご子息の実さんです。
「息子は、いかにもパン屋って顔しているでしょう。うちのパン食べて育ったから。学生時代から店の手伝いなんかもしてくれてね」(牧子さん)
このように牧子さんが評する4代目の実さんは、同店のホームページで「パンおじさんのひとりごと」というブログを公開しています。お店のお知らせ以外にも「近所のこと」として人形町情報なども発信しています。こちらのブログからは、牧子さんがおっしゃる「いかにもパン屋」というお顔も拝見できます。
まつむらを長く支え発展させてきた双子のご兄弟と牧子さんは同い年です。83歳の申年生まれの3人は、来年8回目の年男・年女となります。「うちはサルが三匹」と朗らかに笑う牧子さんの元気の秘訣は、「現役でやっていること」だそうです。
パンが焼ける匂いって、幸せな気分にさせてくれますね。パリやニューヨークなどから進出してきたパン屋さんも、もちろんいい香りに包まれていますが、どこかよそいきで、特別な日の幸福感です(たまに味わえばいいかな)。一方、まつむらさんには「そこにある確かな幸せ」が感じられます。焼き立てのパンの香りが漂うなか、てきぱきと朗らかに働いていらっしゃる皆さんの姿をみていると、日常としての幸福を感じます。
特別なものはいらない、あることが当たり前のものを、長く提供し続けているのがサンドウィッチパーラーまつむらなのです。そんなお店の雰囲気そのものが、おいしさの秘密にもなっています。
2019年6月10日
ブラック さん
愛犬もいつかは死んでしまいます。その時の悲しみを少しでも和らげることができたらいいですね。
2019年3月18日
事務局 さん
りょうさん
2018年10月22日
りょう さん
子育てが大変な時代、本日掲載された「孫が産まれる前から培うジジババ力」は参考になりました。ありがとうございました。
2015年8月24日
小春 さん
人形焼きの板倉屋さん。
おいしいお店ですよね。
昔からファンです!
2014年5月20日
bovsan さん
僕は、アトム。今年16歳になるサバトラの猫。
鉄腕アトムに因んで賢明で強くなるようにという事らしい。
でも寄る年波には、勝てずここ1ヶ月体調を崩し、嫌々ながら通院中。
病院の先生方は、とても16歳には見えないね、毛艶も良いといつも褒めてくれる。
褒められるのは嬉しいけど先生のリップサービス、リップサービスと戒めている。
でも病院の待合室で患者のお母さんにも僕の顔が若いって驚かれた。
どうやら僕は本当に年相応に見えないようだ。特別にエステもやっていないし、それほど手を掛けてもらっているようには思えないんだけど・・・。
唯一思い当たるのは、お母さんと一緒にスターリミルクを15年食べ続けている事だけ。
お陰で殆ど大病もせず、若くいられたってことかニャン。
でもまだ通院中、頑張るニャン!