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『ゲッチョ先生と行く 沖縄自然探検』

2021年9月17日

2021年7月26日、奄美・沖縄が世界自然遺産に登録されました。今回登録の対象となった島は、大陸からの分離、近隣の島と分離や結合を繰り返したことで独特の環境を形成することとなりました。ここにしかいない貴重な動植物や、絶滅のおそれのある動植物の生育地として非常に重要であることが認められたのです。そんな沖縄の自然を知りたい方へ一風変わったガイドブックを紹介します。

自然はリゾート地だけにあるのではない

盛口満/著
岩波書店 
920円(税別)

今回、紹介する1冊はそのタイトルから、沖縄の森に分け入り、海へと潜り探検をするようなイメージがもたれますが、むしろ私たち人間も含めた生き物、生き物が暮らす環境という大きな自然へと誘います。
そんな自然へのガイド役は、著者の盛口満さん、通称ゲッチョ先生です。本著は東京から遊びに来た姪と甥に沖縄を案内するかたちで書かれています。

ゲッチョ先生一行が最初に向かったのは、那覇空港近くの魚市場。しかし、ここでグルメシーンは登場しません。おいしそうな料理の写真もなく、ゲッチョ先生が描いた詳細かつ解剖学的にも正確なイラストがあるのみ。市場に並ぶソデイカ、マンダイ、アーガイと聞きなれない魚が登場します。

市場で買ったヨコシマクロダイを調理する際には、平衡感覚をつかさどる「耳石(じせき)」を取り出し解説します。そのあとは、オリーブオイル焼き、魚汁にしておいしくいただいています。

那覇市内の末吉公園では、沖縄島の中南部にはドングリを付ける木がなく、代わりにその地域の土壌(石灰岩)でも育つソテツが多いことを紹介します。そこから、そんな土壌が生育環境にうってつけのカタツムリが多いこと、さらにカタツムリを餌にするホタルの名所でもあることが語られていきます。そこからは、生き物というのは連綿としたサイクルの中で暮らしていることがわかってきます。ちなみに沖縄に多いホタルは幼虫でも陸に暮らしているそうです。

表面上の自然ガイドではなく、この星に暮らす「いのち」そのものを案内してくれているのです。しかも、実感がわかない広大な物語としてではなく、身近な話題から語られるので、すいすい読み進められます。

西表島で知る自然と歴史

八重山諸島の西表島(いりおもてじま)に渡った一行は、貝塚でジュゴンの骨を発見します。

ジュゴンの骨重たい! なぜ?
ジュゴンは主食としている海底の海草を食べるためには重たいからだが必要で、ジュゴンの骨はほかの生き物に比べ重たいそうです。
なぜ貝塚からジュゴンの骨が?
それは、この地域でジュゴンは食用だったからです。
いまも?
残念ながら八重山のジュゴンは絶滅してしまいました。
なぜ、絶滅したの?
琉球王国時代、ジュゴンは王様だけが食べられる特別なものでしたが、明治になると誰もが食べてよいということになり、乱獲の結果、八重山諸島にはジュゴンがいなくなったそうです。

このようなジュゴンの骨から、「なぜ」の連鎖が続き、ジュゴンの生体の特徴だけではなく、沖縄の人々の歴史にまで話が進んでいきます。

西表島に30年近く通っているゲッチョ先生でも、イリオモテヤマネコは1回しか見ていないそうです。だからといって「絶対見たい」とは思わないといいます。その理由として、イリオモテヤマネコの棲息環境の構成員であるそのほかの動物のことを十分には理解していないことを挙げます。つまり、特別天然記念物だからといってそれだけが注目に値するのではなく、イリオモテヤマネコの生活圏内にいるすべての生き物が大切であり、関心を注いでいかなくてはならないということではないでしょうか。

ミクロの目とマクロの目で生き物を見ることの大切さ

この一冊からは、生き物を観察するときのミクロの目とその生き物が暮らす環境を見るときのマクロの目が必要であることがわかり、そのうえで今だけではない、過去、未来も見据えた行動が私たちに求められていることに気づかされます。

本著の最後にゲッチョ先生は「『ちょっと変わった沖縄旅行がしたいな』と思ったときに、この本が役立ったらうれしいです」と述べています。
巻末には、本著に登場する生き物の索引があり、数え間違いがなければ、その数375!
ぜひ、コロナ収束後には、本著を携え沖縄の自然に触れてみてください。

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著者紹介:盛口 満(もりぐち・みつる)

1962年生まれ。沖縄大学学長。
千葉大学理学部生物学科卒業。私立自由の森学園で教員を務めたのち、沖縄に移住。NPO法人珊瑚舎スコーレに関わり、初等教育から義務教育を終えられなかった高齢者の授業にも携わる。2007年より沖縄大学・人文学部こども文化学科で理科教育を担当。小学生のころより生物への興味が尽きず、興味から進展した研究に関する著作が多く、イラストも自ら手がける。主な著書に、『ものが語る教室――ジュゴンの骨からプラスチックへ』(岩波書店)、『冬虫夏草を探しに行こう : ゲッチョ先生の森の学校』(日経サイエンス社)、『教えてゲッチョ先生 昆虫のハテナ』(山と渓谷社)がある。

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2020年1月24日
事務局 さん

りょうさん


ありがとうございます。
いよいよ東京オリンピック・パラリンピックまで半年となりました。
スポーツはする側も見る側も楽しむだけでなく、感動や勇気を与えてくれるので人々の心を豊かにしてくれるですね。
オリンピック・パラリンピックでは、沢山の選手の熱い闘いを目と心にに焼きつけたいものです。


2019年12月26日
りょう さん

全神経を集中させる静寂の競技「ゴールボール」は面白そうですね、このような障がいの有無を問わず同じ条件で健常者も楽しめる競技が増えることは、スポーツの豊かさにつながり、オリンピック・パラリンピック本来のものと思います。たのしみにしています。

2018年4月20日
りょう さん

 写真家ヨシダナギさんについてのコラム、大変興味深く読ませていただきました。被写体を単に外側から撮るのではなく、自らも被写体と一体となって内側から撮る写真には、たぶん実相が映されているでしょう。是非、写真展を観にいこうと思います。ありがとうございました。

2016年6月29日
りょう さん

アドラー心理学が注目されているようですね。「嫌われる勇気」という言い回しが現代受けするからでしょう。その根底には、目的論があり、西洋は依然としてこの2項対立構造から脱していない。親鸞の「悪人正機説」を2項対立的に受け止めてはいけないように、「利己的な私は嫌われても仕方がない」という自覚が根底にないと、厚顔無恥な人間ばかりを生み出すように思われる。

2016年3月8日
事務局 さん

小春さん

こんにちは。

紹介した本にご興味をもっていただいてありがとうございます。

親子の間では、照れくさくて優しい言葉をかけにくいものですが、大きな病気をした人の気持ちを思いはかり、寄り添うことは大切なことですね。

また、本を読んだら、感想をお寄せください。


事務局

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