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『アルカリ色のくも 宮沢賢治の青春短歌を読む』

2021年4月16日

宮沢賢治という名前は多くの人が知っているでしょう。
『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』などの童話の作者として、もしくは「雨ニモマケズ」の印象的なフレーズによって記憶されていることと思います。
そんな賢治が、最初に表現手段としたのは、短歌だったということは案外知られていません。
賢治が13歳から亡くなる2日前まで書き留めた作品を読み解き、賢治文学に迫ったのが今回紹介する一冊です。

ページを開くほどに驚きが! 若き日の賢治の世界

佐藤道雅/編著
NHK出版
1600円(税別)

宮沢賢治の童話は非常に多くの人に読まれていると思いますが、実は読めば読むほど賢治の迷路に悩まされることがあります。賢治独自の宇宙観やら倫理観、宗教観があり、『銀河鉄道の夜』などは、何度読み返しても自分はどこまで理解できたのか不安になります。
童話だというのに、かなり難解な宮沢賢治。

さらに、今回紹介するのは多くの人に馴染みのない短歌。
敬遠されがちなジャンルですが、9人の現役の歌人が果敢に賢治の作品世界に挑んでいます。ページを開けば「なるほど!」「へーっ」と思われる部分も多々あるのではないでしょうか。
のちの賢治の童話を髣髴(ほうふつ)させる世界が多く詠まれており、賢治の若き日の短歌を知ることで、童話や詩を読む際にも役立つことと思います。

それでは、なんのこっちゃ? という賢治の短歌を紹介します。

入相の町のうしろを巨なる
銀のなめくぢ
過ぐることあり

これは、賢治が盛岡高等農林学校に入学する少し前につくられた短歌ですが、意味としては「入相の町を大きな銀色のなめくじが過ぎることがある」というだけ。

本著によると、「入相」は、町名などではなく、「夕暮れ」を表す意味の言葉だそうです。この時間帯は「逢魔が時」ともいわれ、災いが起こりやすいと考えられてきました。そんな不穏な時間帯に町の裏道を「大きな銀のなめくじ」が通るというのです。
やっぱりよくわかりません。

賢治の青春を追体験するもよし、短歌を堪能するもよし

本著では「銀のなめくじ」というモチーフが後年賢治の童話にたびたび登場する悪役キャラであると紹介されています。

賢治の童話「蜘蛛となめくじと狸」や「洞熊(ほらくま)学校を卒業した三人」にも、銀のなめくじは登場するそうで、どちらの作品でも、「銀のなめくじ」は人当たりがよく、親切なのですが、その裏でとても残虐狡猾な顔をみせているとか。

おそらく賢治はなめくじという生き物に対して、よいイメージを持っていなかったのでしょう。

そこから、なめくじを自分が苦手な人にたとえたとも考えられますし、もっと内面的な問題で、賢治が忌み嫌う悪なるものを象徴としているとも考えられるようです。自分の心のなかに「銀のなめくじ」はいて、夕暮れどきになるとうごめくと考えると、そこからさらに物語は膨らんでいきますね。

本著は時系列に構成されているので、賢治の青春を追体験しながら読むことも可能ですし、短歌一首をひとつの文芸作品として堪能することも可能です。

また、巻末には、宮沢賢治研究家で歌人でもある佐藤通雅による賢治短歌の解説や年譜もあります。

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2020年1月24日
事務局 さん

りょうさん


ありがとうございます。
いよいよ東京オリンピック・パラリンピックまで半年となりました。
スポーツはする側も見る側も楽しむだけでなく、感動や勇気を与えてくれるので人々の心を豊かにしてくれるですね。
オリンピック・パラリンピックでは、沢山の選手の熱い闘いを目と心にに焼きつけたいものです。


2019年12月26日
りょう さん

全神経を集中させる静寂の競技「ゴールボール」は面白そうですね、このような障がいの有無を問わず同じ条件で健常者も楽しめる競技が増えることは、スポーツの豊かさにつながり、オリンピック・パラリンピック本来のものと思います。たのしみにしています。

2018年4月20日
りょう さん

 写真家ヨシダナギさんについてのコラム、大変興味深く読ませていただきました。被写体を単に外側から撮るのではなく、自らも被写体と一体となって内側から撮る写真には、たぶん実相が映されているでしょう。是非、写真展を観にいこうと思います。ありがとうございました。

2016年6月29日
りょう さん

アドラー心理学が注目されているようですね。「嫌われる勇気」という言い回しが現代受けするからでしょう。その根底には、目的論があり、西洋は依然としてこの2項対立構造から脱していない。親鸞の「悪人正機説」を2項対立的に受け止めてはいけないように、「利己的な私は嫌われても仕方がない」という自覚が根底にないと、厚顔無恥な人間ばかりを生み出すように思われる。

2016年3月8日
事務局 さん

小春さん

こんにちは。

紹介した本にご興味をもっていただいてありがとうございます。

親子の間では、照れくさくて優しい言葉をかけにくいものですが、大きな病気をした人の気持ちを思いはかり、寄り添うことは大切なことですね。

また、本を読んだら、感想をお寄せください。


事務局

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