ホーム > いろどりライフスタイル > カルチャー > 『人類vs感染症』

いろどりライフスタイル

カルチャー

『人類vs感染症』

2020年9月17日


岡田晴恵 著
岩波ジュニア新書
820円(税別)


新型コロナウイルスによって私たちの生活に変化が起きてから、すでに半年以上が過ぎました。
人類はこれまでも天然痘やペストなど多くの感染症と闘ってきました。
先人たちが感染症とどのように向き合ってきたのかを知ることで、現在の新型コロナウイルスとの付き合い方もみえてくるかもしれません。
今回ご紹介する一冊は、ワイドショーなどで連日、新型コロナウイルス感染症について解説してきた岡田晴恵先生がジュニアに向けて著したものです。


感染症は、それを引きおこす病原体という微生物と人間とのかかわりあいの結果であり、ときとして、この関わりを昆虫や動物が仲立ちします。ですから、感染症は人間と昆虫や動物、また細菌やウイルスといった目に見えない微生物との関係の結果、病気としてもたらされるものなのです。


本著では、まず感染症の定義が上記のように書かれています。
近年感染症がパンデミックになりやすい要因として、発展途上国を中心に行き過ぎた宅地開発の結果、野生動物と人間の生活圏が近くなったこと、そして、経済のグローバル化によって、人の往来がこれまで以上に広く頻繁に行われるようになったことが考えられます。

本著は、原因ウイルスの発見秘話やワクチンが開発されるまでなどの科学史を紹介しているとともに、感染症の患者に対するいわれのない差別、ペストを代表とする感染症がもたらした思想の変化にも触れています。

「ペストの歴史から学ぶ」という章では、ペストが流行した当時のヨーロッパの劣悪な衛生環境からペストの感染経路に触れたのち、ペストによって人心の荒廃が進んだと述べています。

ペストによって多くの人が死に、その遺体が街中に積みあげられているのを見た人の中には、恐怖を回避するため自ら死を選んだ者も少なくありませんでした。このような極限の精神状況は疑心暗鬼にさせます。
誰かのせいにしなくてはいられない……そこでユダヤ人が井戸に毒を入れたなどのデマが飛び交うようになったといいます。このような場合、スケープゴートの対象については普段から反感や差別を抱いているものとなります。ペスト大流行の際に異教徒のユダヤ人であったように。
日ごろは理性で抑えている醜い感情も、恐怖に支配された非日常のなかではたやすく堰を切ったようにあふれてしまうのです。
これは、現在の感染者への差別や自粛警察といわれる人に代表される身勝手な倫理観に通じます。

テクノロジーの進化ほどには私たち人間の中身は進化していません。
「コロナ禍」のいまをよりよく生きるためには、本著から感染症の歴史に触れ、考えてみるのもよいのではないでしょうか。
そのうち、新型コロナウイルスのワクチンも開発されるでしょう。しかし、また次の恐るべきウイルスは必ず現れます。そのとき、どのような行動がとれるのかは、その人の核となる思想、哲学に左右されると思います。
この記事の詳細はこちら


岡田晴恵(おかだ・はるえ)1963年埼玉県生まれ。白鷗大学教授。
共立薬科大学大学院薬学研究科卒業。順天堂大学大学院医学研究科後期中退、アレクサンダー・フォン・フンボルト奨学研究員として、ドイツマールブルク大学ウイルス学研究所に留学、厚生労働省国立感染症研究所研究員、日本経団連21世紀政策研究所シニア・アソシエイトを経て現職。
おもな著書に『強毒型インフルエンザ』(PHP新書)『うつる病気のひみつがわかる絵本』シリーズ(ポプラ社)など。



おしゃべりパーク
クチコミを投稿する
写真1
写真2
写真3

※写真は幅205pxにリサイズして表示されます。

2020年1月24日
事務局 さん

りょうさん


ありがとうございます。
いよいよ東京オリンピック・パラリンピックまで半年となりました。
スポーツはする側も見る側も楽しむだけでなく、感動や勇気を与えてくれるので人々の心を豊かにしてくれるですね。
オリンピック・パラリンピックでは、沢山の選手の熱い闘いを目と心にに焼きつけたいものです。


2019年12月26日
りょう さん

全神経を集中させる静寂の競技「ゴールボール」は面白そうですね、このような障がいの有無を問わず同じ条件で健常者も楽しめる競技が増えることは、スポーツの豊かさにつながり、オリンピック・パラリンピック本来のものと思います。たのしみにしています。

2018年4月20日
りょう さん

 写真家ヨシダナギさんについてのコラム、大変興味深く読ませていただきました。被写体を単に外側から撮るのではなく、自らも被写体と一体となって内側から撮る写真には、たぶん実相が映されているでしょう。是非、写真展を観にいこうと思います。ありがとうございました。

2016年6月29日
りょう さん

アドラー心理学が注目されているようですね。「嫌われる勇気」という言い回しが現代受けするからでしょう。その根底には、目的論があり、西洋は依然としてこの2項対立構造から脱していない。親鸞の「悪人正機説」を2項対立的に受け止めてはいけないように、「利己的な私は嫌われても仕方がない」という自覚が根底にないと、厚顔無恥な人間ばかりを生み出すように思われる。

2016年3月8日
事務局 さん

小春さん

こんにちは。

紹介した本にご興味をもっていただいてありがとうございます。

親子の間では、照れくさくて優しい言葉をかけにくいものですが、大きな病気をした人の気持ちを思いはかり、寄り添うことは大切なことですね。

また、本を読んだら、感想をお寄せください。


事務局

Copyright © 2020 Health Scramble All Rights Reserved.