ホーム > いろどりライフスタイル > カルチャー > 『バッタを倒しにアフリカへ』

いろどりライフスタイル

カルチャー

『バッタを倒しにアフリカへ』

2017年7月21日

バッタ

前野 ウルド 浩太郎著

光文社新書  

920円(税別)

最初に言っておきますが、今回ご紹介する本はれっきとした昆虫学者の実地調査に基づく研究について書かれた1冊です。表紙は、バッタに扮した著者ですが、芸人ではなくれっきとした昆虫学者です。
しかし、この表紙につられて「おもしろそう」と読み始めた方、そのチョイスは正解です。
ハラハラして、ときにほろっとして、とにかく面白い。知らない世界を知るという知的好奇心を十分に満たしてくれる1冊なのです。

著者の前野 ウルド 浩太郎氏は、幼いときに昆虫の不思議に魅了されました。「なぜそんな動きをするのか」「なぜそんな体の形をしているのか」、どんどん疑問がわいてきたといいます。そんな浩太郎少年の前に現れたのが『ファーブル昆虫記』を著したファーブルでした。昆虫の疑問をどんどん明らかにしていくファーブルは、どんなヒーローよりもカッコよく、いつしか浩太郎少年の目標となりました。

長じて昆虫を研究するようになった著者は若手研究者を海外に派遣する日本学術振興会の制度を利用して、サバクトビバッタの研究のためにアフリカのモーリタニアに赴きます。

昆虫学者に限らず、大学や研究所で給与を得ながら研究を進めていくのは非常に厳しいのが日本の現状です。派遣期間の2年後に確実に就職が得られるわけではありませんが、昆虫学者として生きていくためには、研究をして、その結果を論文にまとめなければなりません。

アフリカでは何年かに1度、サバクトビバッタが大発生することがあります。バッタの大群は植物を食い尽くしながら移動するため、いったん大発生すると深刻な食糧危機をもたらします。それをくいとめるために、著者はバッタの生体と行動を調べ解明することにしました。

モーリタニアでは、国立サバクトビバッタ研究所にお世話になるのですが、ここで登場するモーリタニアの人々はとても魅力的です。ババ所長はとても懐の大きな人で、読み進めていくうちにファンになる人も少なくないと思います。また、専属ドライバーのティジャニさんも、ちょっとした嘘をついて報酬を多く受け取ろうとすることもありますが、それは生きていくための知恵であり愛嬌があるのです。著者の異文化体験は、そのまま読者の異文化体験になります。

モーリタニアに着いてしばらくは、肝心なサバクトビバッタになかなか出会えなかったり、サバクトビバッタ探索中に出会った子どもたちに「バッタを買い取る」と告げたことで、たくさんの子どもたちが死んだバッタもふくめて持ち寄ったため、大散財をしてしまったりとなかなか研究が進みませんでした。
本著の後半で、ようやくバッタの大発生が起こります。派遣期間を延長して、無給で研究を続ける著者への応援をこめて読み進めてきた読者は、もう感情移入してしまっているため、涙が出てきます。 

1冊読み終わったときに、モーリタニアという遠い国がとても親しく感じられるのではないでしょうか。それは若き昆虫学者・前野 ウルド 浩太郎さんがもっているモーリタニアへの想い、モーリタニアの人々への敬愛、そして、自分がやると決めた夢を叶えるためのエネルギーを読者が共有することができるからだと思います。
著者の文章は、読者をどんどん巻き込んでいく力があります。昆虫に興味がない方にもお勧めしたい1冊です。

この記事の詳細はこちら


前野 ウルド 浩太郎(まえの・うるど・こうたろう)1980年 秋田県生まれ。昆虫学者。国立研究開発法人国際農林水産業研究センター研究員。神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。京都大学白眉センター特定助教を経て、現職。
農作物を食い荒らすサバクトビバッタの防御技術の開発に従事。
ミドルネームの「ウルド」はモーリタニアでの研究活動が認められ、国立サバクトビバッタ研究所のババ所長より授かった。「ウルド」には、「○○の子孫」という意味があり、モーリタニアでは最も敬意が払われるミドルネーム。
著書に『孤独なバッタが群れるとき――サバクトビバッタの相変異と大発生』(東海大学出版部)がある。



投稿の方法はこちら

おしゃべりパーク
クチコミを投稿する
写真1
写真2
写真3

※写真は幅205pxにリサイズして表示されます。

2016年6月29日
りょう さん

アドラー心理学が注目されているようですね。「嫌われる勇気」という言い回しが現代受けするからでしょう。その根底には、目的論があり、西洋は依然としてこの2項対立構造から脱していない。親鸞の「悪人正機説」を2項対立的に受け止めてはいけないように、「利己的な私は嫌われても仕方がない」という自覚が根底にないと、厚顔無恥な人間ばかりを生み出すように思われる。

2016年3月8日
事務局 さん

小春さん

こんにちは。

紹介した本にご興味をもっていただいてありがとうございます。

親子の間では、照れくさくて優しい言葉をかけにくいものですが、大きな病気をした人の気持ちを思いはかり、寄り添うことは大切なことですね。

また、本を読んだら、感想をお寄せください。


事務局

2016年3月8日
小春 さん

『親ががんになったときに読む本』もう少し早くに出版してほしかったです。

母ががんになったとき、医師とのパイプ役はがんばって務めたつもりですが、がんになった親の気持ちにまでは寄り添えなかったかもしれません。

反省を込めて、読んでみようと思います。

2014年3月4日
小春 さん

『イラクサ』というタイトルから、ひと癖もふた癖もありそうな小説ですね。

読んでみようと思います。

2013年4月2日
さと ちゃん

池上さんの番組は非常にわかりやすいなぁと思っていましたが、

伝え方がよいのかもしれませんね。

自分でも日常生活で「伝えたつもり」で失敗することがあります。

せっかくご紹介いただいたので、手に取って読んでみて、

今後に生かせればいいな。

Copyright © 2017 Health Scramble All Rights Reserved.